円覚寺 塔頭 雲頂菴

菴主の話

雲頂菴という寺を守る住職として、日々考えていることをお話していきます。

開門落葉多(もんをひらけば らくようおおし)

今日は掛け軸についてのお話です。

 

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「門を開けば落葉多し」
泰峨大岑(たいがだいしん)※1/筆

こちらは、「聴雨寒更尽 開門落葉多」(あめをきいて かんさらにつき もんをひらけば らくようおおし)という対句の下の句です。

唐代の詩僧である無可(むか)上人の詩で、『槐安国語(かいあんこくご)』※2にも採られています。
はらはらと落ち葉が散ってくる。いつの間にかもう秋も深まってきたのだな、という情景です。
皆さんのイメージでは……例えば東京なら、神宮外苑にある聖徳記念絵画館前の銀杏並木などが思い浮かぶのではないでしょうか。

草庵に閑居する隠者の心情や寂寥感が表現されていて、季節的には晩秋頃のものでしょう。
でも私の感性では、もう少し早いのです。

雲頂菴の門前にある桜の葉は、朝晩が少し涼しくなってくる8月中頃から散り始めます。
すると、「そうか、まだ暑いさなかだけれども、秋はちゃんと忍び寄って来ているのだな」と感じます。
「あぁもう、掃除しなくちゃ…」って思う。

それで私は、8月下旬や秋が始まろうとする10月中旬頃にも、この軸を掛けることがあります。
また、「昨日掃いたのに、もう落ち葉が散っているよ」というふうに、すべてを払い尽くしたところに、更に尽きないものが生じてくるという境地として受け止めてもいいのです。
 

※1 泰峨大岑:前雲頂菴住職
※2『槐安国語』:江戸中期、臨済僧の白隠慧鶴(はくいんえかく)が鎌倉時代の臨済僧・宗峰妙超(しゅうほうみょうちょう)の『大燈国師(だいとうこくし)語録』に著語(じゃくご)・評唱(ひょうしょう)を加えて世に出した禅の書。

 

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