円覚寺 塔頭 雲頂菴

菴主の話

雲頂菴という寺を守る住職として、日々考えていることをお話していきます。

喫茶去(きっさこ)

今日は掛け軸についてのお話です。

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「喫茶去」
朝比奈宗源(あさひなそうげん)/筆

中国唐代の趙州従諗(じょうしゅうじゅうしん)という禅僧の言葉です。
趙州和尚は、のちに有名な公案となる数々の言葉を残した人であり、この「喫茶去(きっさこ)」は茶席の禅語としてもたいへん親しまれています。

『趙州語録』によると、
趙州和尚は参学にきた修行僧に、
「曽(かつ)て此間(すかん)に到(いた)るや」(ここへ来たことがあるか)と尋ねました。

そして、
「曽て到らず」(ありません)と答えた人にも
「曽て到る」(あります)と答えた人にも
「喫茶去」と言いました。

寺の院主(寺務を司る僧)が、そのわけを尋ねたところ、
趙州和尚は「院主さん」と呼び、返事をした院主にも
「喫茶去」と言ったのだそうです。

「去」(さる)という字があるため、「お茶を飲んだらお帰りください」とする解説も見受けられますが、そうではなく「さぁお茶を一杯召し上がってください」ということ。
「いろいろあるだろうけれど、今この一杯を楽しみなさい」と。

 

現代でも、訪問先でお茶を出されることがありますね。
「いや、忙しいのだからお茶なんか飲んでいる暇はない、早く帰りたいな」と思う人や、
「なんだ、もっと美味しいコーヒーでも入らないのか?」などと思っている人がいるかもしれない。
だけれども、「今、出していただいたお茶を、まぁ美味しくいただきなさいよ」という言葉です。

ですから、もし床の間にこの軸が掛かっていたら、そこでは本当にゆっくりお茶を頂戴していいんじゃないかな、と思います。

 

※ 朝比奈宗源(1891年~1979年):明治、大正、昭和期の臨済宗の僧。号は別峰(べっぽう)、平等軒。京都妙心寺や鎌倉円覚寺などで修行。臨済宗円覚寺派管長。世界連邦日本仏教徒協議会会長。また、人気テレビ時代劇に題字を揮毫したことでも知られる。

 

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