円覚寺 塔頭 雲頂菴

菴主の話

雲頂菴という寺を守る住職として、日々考えていることをお話していきます。

豊かになった世の中で〈2〉

私が幼稚園に行っていた昭和33年頃、母は洗濯板を使い、井戸端で洗濯していました。
その井戸は、ガッチャンガッチャンというポンプ式のものでした。
さすがにもう釣瓶(つるべ)ではなかったけれど、まだ上に滑車は残っていました。

バケツに汲んだ水を、母は台所の水がめにあけていました。
そして夕方になると、裏の五右衛門風呂に水を運んでいました。
それがごく当たり前の時代だったのです。

それから何年かして、その井戸が電気ポンプになり、台所と風呂場に蛇口がつきました。
ひねれば水が出る。
バケツに水を汲んで運ばなくていいのですから、本当に、「文明開化とはこのことだ!」と思いました。

私の寺は高台にあるので、水圧が足りず、水道はしばらくありませんでした。
しかしそのうちに水道も引け、トイレは水洗になりました。
以前は汲んで運んでいた水が、トイレにザーッと流れていく。
最初、私は、「こんなもったいないことをやって、いいのだろうか?」と疑問に思いました。

でも、今の人はこれが当たり前。
蛇口をひねれば、お水どころじゃなくてお湯も出る。
ボタンを押せば風呂が沸き、ご飯も炊ける。
私が子供の頃からみたら、今は極楽です。
 

――引き続き明日も、この話をします。
 

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