円覚寺 塔頭 雲頂菴

菴主の話

雲頂菴という寺を守る住職として、日々考えていることをお話していきます。

天性の強い意志〈1〉

以前、この「菴主の話」の欄で、
仏様が私たちに与えてくださっている「生きる力」の中で一番のものは、「乗り越える力」ではないかと、私は感じています。(2014年9月29日「乗り越える力」
という話をしました。

この世のすべての人が「乗り越える力」を授かって生まれてきていると、私は思っています。
 

ある年の大晦日……今、この雲頂菴で副住職をやっている、うちの長男がちょうど1歳頃のことです。
身体の割に頭が大きくて不安定でなかなか立ち上がれず、まだ這い這いでウロチョロとしている時でした。

正月支度で忙しいさなか、長男が夜遅くまでまとわりついて、離れなかったのです。
そして、ふっと見ると、いきなり立ち上がった。
「あ、立った! 歩いた、歩いた!」って喜んでいたら、柱にゴツンと頭をぶつけた。

打ちどころが悪く、柱に歯が引っかかってしまったようでした。
そのため、生えて来たばかりの前歯2本のうちの1本が、歯茎からもげてしまった。
血が出るし、大晦日のためお医者さんはやっていないし、たいへんでした。
一応、診てもらって治療を受けることができましたが、しばらくジュクジュク出血し、痛い痛いと言っていました。

でも子供はね、歯が折れるような痛い思いをしても、諦めないのです。
見ているとまた、立とう、歩こうとしている。
「転んで痛い思いをしたから、もう立つのは止めて這い這いでいいや」
などとは、全然思っていない。
なんとか立とうとして、また椅子にゴチンとぶつかり泣いていたりする。

つまり、歯が1本犠牲になった痛みにもひるむことなく、乗り越えて立ち上がろうとしているのです。
その姿を見て、
「あぁ、人というのは本来、こういう力、意志をもっているんだ。乗り越えられないものはないのだ」
ということを、強く感じました。

自分の子供だけでなく、きっとどの子もそうだろうと思います。
 

――引き続き明日も、この話をします。
 

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