円覚寺 塔頭 雲頂菴

菴主の話

雲頂菴という寺を守る住職として、日々考えていることをお話していきます。

三級浪高魚化龍(さんきゅうなみたこうしてうおりゅうとかす)/痴人猶戽夜塘水(ちじんなおくむやとうのみず) 〈1〉

今日は掛け軸についてのお話です。

「三級浪高魚化龍 痴人猶戽夜塘水」
朝比奈宗源(あさひなそうげん)/筆
jiku_20150427

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『碧巌録(へきがんろく)』第七則の頌(じゅ)に出てくる詩句です。

もうすぐ、端午の節句です。
この時期、男の子がいる家で上げられる鯉のぼり。
これはもともと何なのだろうと、子供の頃からずっと疑問に思っていました。
修行して間もなく碧巌録の提唱があり、「何だお前、そんなことも知らないのか」と朝比奈宗源老師から言われました。

昔、黄河の氾濫を防ぐため、禹王(うおう)という皇帝が、今で言う放水路みたいなものを造りました。
すると、水が三段に落ちるようになり、禹門(うもん)三級の滝と呼ばれる大きな滝ができたのです。
春先になると、蒙古やチベットなど奥地の雪が解け、黄河の水も増えてきます。
「浪(なみ)高うして」というのは、そういう意味です。
その三段の滝を、鯉が遡上してゆく。

日本の鯉と違い、中国の鯉は、人が乗れるような1m余りの大きなものがざらにいます。
そういう鯉が黄河を遡り、天に跳ね上がって龍になるという伝説があるのです。
龍は架空の動物ですし、鯉が龍になるというのは不思議な例えで、そこには何かまた別な故事があるのかもしれません。

とにかく、禹門三級の浪がどんなに高くても、そこを凌(しの)いで上った鯉は、ひれから火が出て龍になり天上する。
努力し、勇ましく勢いのある者は、逆流するところがあっても、簡単に跳ねのけてしまうという話です。

鯉のぼりはこのような故事にならい、願いをこめて上げられています。
 

——引き続き明日も、この話をします。
 

※ 朝比奈宗源(1891〜1979):明治、大正、昭和期の臨済宗の僧。号は別峰(べっぽう)、平等軒。京都妙心寺や鎌倉円覚寺などで修行。臨済宗円覚寺派管長。世界連邦日本仏教徒協議会会長。また、人気テレビ時代劇に題字を揮毫したことでも知られる。

 

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